【体験報告】
怪しい広告に電話をかけてみる
古い情報誌にて、興味ひかれる広告を二つ見つけた。さっそく電話をかけてみる。
「もしもし」
「はい、心理コントロールセンターです」
落ち着いた男性の声。 怪しすぎる名称を、ためらいもなく口にする。
その名前を今も使っているとは思わなかったので、 不覚にも狼狽。
『マインドコントロール』を連想するのは、僕だけなのだろうか。
気を取り直して尋ねる。
「あの、催眠療法のコースって、ありますか?」
「ありますけど」
「時間と料金は、どれくらいなんでしょうか」
「初回は、2万円。二回目からは、1万5000円。
十回のコースだと、10万円。二十回のは、16万5000円。
それだと一回あたり、およそ8000円になりますね」
誠実そうな口ぶりだが、最後のひとことだけ、商売ッ気を感じさせた。
「時間は、どれくらいですか」
「一回あたり、一時間です。どんな治療を希望されてますの?。アガリ症とか?」
「いや・・・あの、もっと前向きになりたいんです」
「前向き?。積極的とか?」
「そうです」
「どんなお仕事をしてらっしゃいます?」
「学生です」
「あ、学生さん」
何か、考えているような間があった。
学生にとっては高すぎると感じたのだろうか。
親切な人なのかも知れない、と、ふと思った。
僕は間髪を入れず尋ねた。
「学割とか、無いでしょうかね?」
「うーん、無いんだよね。健康保険も利かないからねえ」
「利かないですか」
「最初の相談だけなら、5000円なんだが・・・」
「でもそれは、催眠では無いんですよね」
「催眠は、さっき言った2万円なんだよなあ」
「わかりました。もう少し、考えさせてもらっていいですか」
「うん、よろしく」
さっぱりとした、親しみの持てる対応であった。好感を持った。
続いて、もう一本、電話。
「もしもし」
「はい、サンテアバン・サロン京都です」
若い女性の声。明るく、はっきりとした喋り方。 美容サロンに相応しい。
僕は急に萎縮してしまい、かろうじて相手に聞こえるような細い声で尋ねる。
「あの、『人間洗濯機』って、今も置いてらっしゃいますか」
「やってますよ」
「男性でも、体験できるんでしょうか」
「代理店を始めるおつもりとか、ありますか?」
「いや、そんなつもりは、全然無いんですか」
「でしたら、本当に申し訳ないんですが、一般の男性の体験は、受け付けていないんですよ」
人間洗濯機の購入を考えている業者のみ、体験できるらしい。
「営業の目的では、無いんですよねぇ?」
この人も親切っぽい。少しでもビジネスに関係があるのなら、
すぐにでも体験させてくれそうな勢いだ。
だがあいにくこちらは、純粋な興味によって電話しているのみ。
「単に、体験してみたいだけなんです」
「それでしたら・・・」
「わかりました。では、他に人間洗濯機を体験できる場所って、無いですかね?」
「置いてあるところ自体が少ないですから・・・」
人間洗濯機を体験するためには、予想以上の困難が伴うようであった。
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